9月14日
『一紀くんこんにちは。
一昨日から穏やかな天気が続いているおかげか、今日の自由行動で訪れているハウステンボスの景色も綺麗に見えます。いくつか写真が撮れたので、一紀くんにも送ります』
昼休み、屋上でカップ麺を食べた僕は先輩から届いたメッセージに目を通す。
出発の日にメッセージをくれたことも嬉しかったけれど、おそらく僕の負担にはならないよう、時々タイミングを空けて連絡してくれている彼女の気遣いをありがたいと思った。
「あ、……この写真、ちょっとブレてる」
画面をスクロールしていくと、中央の塔を撮りたかったのか本人なりに頑張ったものの、ピントが一部合っていないと思われる写真を見つけて口元が緩む。
学年が異なるため、どうしても彼女と一緒に修学旅行へ行くことは叶わなかったがこうして先輩の見た景色を共有してもらえること。それから、旅行中も僕を気にかけてくれていることがとにかく嬉しく、今のところは不安を感じずに済んでいる。
『君が楽しめているようで何より。
ただし、うっかり羽目を外して体調を崩すことがないようにね?』
余計な心配だと分かっていても、向こうで万が一何かあった時に駆けつけられない現状からこんな返事になってしまったことに後から気付いたが、既に送信ボタンを押してしまった以上はどうしようもない。
「帰ってくるまであと三日。いや、学校で会うとしたら、また更にかかるのか……」
つい三日前に小波先輩やリョータ先輩も交えて遊園地へ行ってきたばかりなのに、もう先輩と直接会って話したいと思いはじめている辺り僕は重症らしい。修学旅行の翌日から連休だけれど、もしも彼女に予定がなければそのどちらかで会えないだろうか。
一瞬そんな考えが浮かんだものの、旅行直後で疲れているだろう彼女に無理をさせるわけにもいかず。溜め息をついた僕は、予鈴が鳴るまで送ってくれた写真を眺めていた。