やさしいこころはここにあります
「我が伴侶よ。先に言っておくが、無理だと思った時はどうか躊躇わず抵抗して欲しい」
柔らかな布団の上で、室内の照明を背にこちらを見下ろすあなたから切々と伝えられたその一言に私は思わず首を傾げた。
なんだかこの世の終わりみたいな顔をしているのでどうしたのかな、と気になってはいたのだけれど。伴侶として迎えられた今日に至るまで、ずっと優しかったあなたが今この瞬間も私を気遣ってくれていることを知ってどうしても顔が緩んでしまう。
「抵抗、してもいいんですか?」
「ああ。伴侶である其方に拒まれるのは正直寂しいが、それ以上に、意に沿わぬ行為によって其方につらい思いをさせてしまう方がもっと嫌だ。なに、我とて日頃より鍛えているのでそう簡単に意識が飛ぶことはあるまい」
ちょっぴり意地悪な質問だろうか、と思いながらも結局尋ねた私に対し、返ってきた言葉にもあなたの誠実さが滲み出ていてまた心が温かくなる。敢えて平気そうに言ってくれているものの、内心しゅんとしているのも伝わってきたので今度は私からあなたへ手を伸ばした。
硬質でありながら、私に触れる際は荒々しさとかけ離れて、いつだって紳士的だったあなたの指先を自分のそれでそっと包み込む。そうして触れ合ったところから、私の熱があなたにもうつったら良いと思った。
「しませんよ」
「……、む?」
「こんなにも、私のことを考えてくれている優しいあなたに。そんな乱暴なことはしません」
一瞬の隙をついて、驚いていたあなたの頭を掻き抱いた私は幾度もそこに口づけを落とした。
普段はあなたからしてくれることが多かった分、更にびっくりしたのか固まったらしい様子も間近で見つめてうっかり笑い声が漏れる。
「最愛のあなただからこそ、私の全てを暴いてもらっても構わないのです」
――でも、恥ずかしくなって顔を隠そうとするくらいは、どうか許してくださいね。
この先、お互いに愛し愛されて、きっと今以上に想いが深まる未来を想像して胸が高鳴る。
すっかり火照ってしまった頬に自ら手を添えるよりも早く、気付けばあなたの指先に包まれてそのまま数えきれないほど唇を重ねられた。僅かな隙間から、舌先も甘く食まれる内にいつしか二人とも布団に寝転がる。
もはやぴったりとくっついた身体のどこもかしこも熱く、あなたが欲しい、とひたすらに思ってしまっていた。
「そんな可愛らしい顔をして。いけない子だな」
「ん、……嫌いに、なりました?」
「まさか。むしろ、其方が我の伴侶となってくれたことを心から喜ばしく思う限りだ」
愛している、と噛みしめるように呟いたあなたに私も安心して身を委ねる。どちらからともなく繋いだ手もずっと離れず、私たちは二人揃って幸福の海へと溺れた。