my sweetie ghost
「こんばんは。シーツのおばけです」
「……」
「あっ。この姿は今夜限定のものなので、どうか心配しないでください」
仕事に関わる連絡が入ってきたためいったん席を外した後。部屋に戻ってくると、つい先程まで伴侶がいたはずの場所に何やら面妖な何者かがちょこんと座り込んでいた。
その体格と声からして、どう考えても伴侶自身であることはすぐさま我にも分かったが、わざわざ本人がおばけと名乗っているのならばきっと意味があるのだろう。そのような判断から、ひとまずそのまま隣に腰掛けて早速接触を試みる。
「相分かった。して、貴殿は何故ここに姿を現したのかね?」
「それはですね。実は隊長さんに一言、言ってみたいなと思ったことがありまして」
「ふむ」
「Trick or Treat?」
本日の記念に買ってきたという、とある野菜をベースにつくられた甘いプリンを二人で頬張ったばかりだったにもかかわらず、どこか弾んだ声音で尋ねられる。目元に黒の布地でも当てているのか、残念ながら直接眺められはしなかったがおそらくきらきらとした眼差しで我を見つめているのも伝わってきた。念のためポケットの中身を探ってみたがあいにく飴の一つすら見当たらない。となれば、返答はただ一つに限られる。
「では潔く、貴殿からのいたずらを受け取るとしよう!」
両手を広げ、渡せる菓子を持っていないことを示しながら伝えると少しの間を置いて柔らかな温もりが胸元にくっついてきた。次いでシーツ越しに伸ばされた両腕も、我の背中に回されてしっかりと抱擁される。
一般的なイメージのいたずらとはやや異なる趣向だな、と内心で思うも、くっつかれて全く悪い気はしなかったので我も普段と変わらず寄り添った。敢えて不満を挙げるとすれば、シーツに遮られているせいでその顔が見えない点ぐらいかと考えていたのだが。
「今日はもう、隊長さんがお仕事とかで頑張らなくたっていいように邪魔しています。ふふふ、……あったかいですね」
ふと、楽しげに零された一言によってどうしようもなく目の前の相手への愛おしさが込み上げる。ああ駄目だ。こうなっては、もはや我慢出来そうにもない。
「……そうか。では我からも、Trick or Treat?」
「えっ」
「おや。別に尋ね返してはいけない、なんてルールも設けられていなかっただろう?」
特に想像していなかったのか、動揺を隠せていない可愛らしいおばけに微笑みながらシーツの端に手を伸ばす。
「其方も菓子を持っていないならば、もちろんTrickということで良いな」
そうして露わになった無防備な唇に、遠慮なく己のそれを重ねると今度は我からも抱きしめる。
赤く染まった伴侶の表情と潤んだ瞳は今まで食べたどの菓子よりもずっと甘く、我の胸を満たしたのも間違いなかった。